俺の記憶では、応援団は
隊長の大声と大ダイコの力強い声、リズムを取る甲高い笛の音、そして旗の空を切る音が折り重なって
一つのモノになっていた気がするのだ。
けれど今、この部室には二人しかいない。
俺がタイコを叩きながら笛を加えて吹く事は可能だとしても、
真白が8を横にした無限の記号の様に旗を振りながら、両手を振るのは絶対に不可能だ。
なら、旗か手をやらなければいいんだよ。
なんていい加減な事は二人とも口には出さなかった。
王道には王道たる由縁があるのだ。
第一、真白が超人的な声量の持ち主だったとしても一人で何百人何千人が集まる屋外会場に声援を送るのは、さらに不可能だと思う。
そう、あと数週間後には大地や木田、ついでに剣が所属する野球部の試合があるのだ。
甲子園に行くために、絶対勝たなくてはいけない試合らしい。
