楡が面倒臭そうに頭を掻き、警備員が固まるホテルの入り口周辺を見て、溜息を吐いた。


「思った通り、結構ガード堅そうだな」

「富崎グループが巨額を注ぎ込んだ式ですからね。招待状が無い人は入れないんです。裏口からなら入れそうですが」


五月女が印刷した見取り図を確認しながら、真幸は話を進める。

それを聞いた日野が口を開いた。


「それなら、一番怪しまれる可能性の少ない糸田君が早智さんを裏口から連れ出すのが良いのでは?楡先生、車を回せますか?」

「裏口に直接付けたら怪しまれる。すぐ隣の路地から乗るようにしてもらえ」


タバコを携帯灰皿に入れて、楡は運転席へと向かった。

助手席には、早智の恋人・龍之介の姿がある。

それを確認した真幸は助手席の窓を覗き込んだ。


「龍之介さん。忙しいのにすみません……。でも、どうしても姉と結婚してほしいから」

「良いよ。むしろ、俺たちの為にありがとう」


龍之介は柔らかな表情で言った。


「さぁ、作戦開始よ!」


明衣の掛け声で、それぞれが持ち場に付いた。