変なあだ名を付けるのは逸識の趣味なのか何なのか、生徒会のメンバーも鮎川以外あだ名で呼ばれている。

逸識は、無表情ながら不機嫌オーラを垂れ流す小早川を見て、うーんと首を傾げた。


「一織のオリと、お前が甘いもの好きだから糖分の糖くっつけて“オリゴ糖”。結構良いと思うんだがなぁ…」

「やだ。バカじゃないの」


ぷいっ、とそっぽを向いて逸識から目を逸らす小早川に、五島は頭を掻きながら言う。


「会長、すぐよくわかんねぇあだ名付けるからな。俺なんて沖縄方言だし」

「私なんて外国人みたいな名前ですよ。きっと本名から取ったんでしょうけど」


八重も溜息を吐いている。実は周りの面々もあだ名を気に入っていないらしい。それを知らない逸識は、にこにこと笑顔のまま皆をあだ名で呼んでいた。


「アンケボックス会議始めるから、席着いてー!」

「はーい」


ただ一人あだ名を付けられていない鮎川が呼び掛ける。アンケボックスとは、生徒から意見や要望を集める箱で、いわば目安箱のようなものである。

それを開いて、生徒の要望にどうやって応えるかを会議するのが、今日の生徒会の仕事だ。


「じゃあ、どんどん上げてくわよ」


鮎川がてきぱきと進行し、会議が始まった。