インフォメーションセンターでヘアピンを受け取ると、少女は嬉しそうにはしゃいだ。巡に付けて欲しいとねだる。
巡は少女の頭に左右対称になるようにヘアピンを装着した。
「可愛いッスよ」
「えへへ、ありがと!」
しばらくしてから本郷と少女の母親がやってきて、母親に何度も頭を下げられた。巡は何だかうれしいようなくすぐったい気持ちになる。
「このたびは本当にありがとうございました。これ、少しですけどお礼に受け取ってください」
そう言って手渡されたのは、店内にあるケーキ屋の箱だった。そこそこ高級店なので、高校生が買う代物ではない。
「い、良いんスか? これ高いやつ…」
「娘のわがままを嫌な顔せずに聞いてくださって…本当に感謝しているんです。ほんの気持ちです、受け取ってください」
ズシリと重い箱を受け取り、巡はにやけそうになる頬を抑えた。
親子は4人に背を向け去っていく。少女が帰り際に振り向いて、言った。
「ありがと、わんこのお姉ちゃん!」
「どういたしましてー! …って、もっとマシな呼び方あるでしょ‼」
「わんこて…」と落ち込む巡の肩を叩き、本郷は笑った。
「人助けって気持ちいいでしょう? そのケーキ、フードコートで食べちゃわない?」
指さす先にはお礼の気持ちがこもった白い箱。巡は一つ頷いた。
(これだもん、aucやめられないッスわ)
フードコートに着くなり、誰がどれを食べるかで言い争いになったのは言うまでもない。
end.



