巡は少女を肩車すると、嗅ぎ取ったにおいを追って歩き始めた。その足取りは確信を持った迷いのないものだった。日野は唸る。
「まさか本当に匂いがわかったというのか…?」
「アタシにかかればこんぐらいの物探しは日常茶飯ッスよ。こういうとこ来てもよく物失くすんで、私物には別々のコロンつけるようにしてるんス」
財布とか重要なものは特に、と付け加え、巡は再び鼻をすんすんと鳴らした。どうやらこのあたりらしい。
「匂いはここで途切れてるッスね」
そこはエスカレーターを登り切り、おもちゃコーナーの前辺りだった。きょろきょろしながら店内を動き回っている五月女を発見したが、その様子を見る限りだとヘアピンは見つかっていないようだ。
日野と巡の姿を確認した五月女は、やや安堵の表情を滲ませながら近づいてくる。
「めぐちゃんの鼻ではここなんだね。でも…一通り歩いてみたけどヘアピンらしきものは見付からないんだ」
「ここで匂いが途切れちゃってるんスよね…誰かが拾って店員さんに預けたかな」
巡は困ったようにそう言ってから、近くにいた従業員に声をかけた。
「スイマセン、あの…ヘアピンみたいの落ちてませんでした? これとおそろいの」
巡は少女の髪についているピンを指さしながら尋ねる。すると、従業員は何か気が付いたのか、「ああ」と一際高い声を上げた。
「それね、エスカレーターの前に落ちていたから、インフォメーションに預けたのよ。あなたが落とし主さんだったのね」
「じゃ、じゃあ…」
「きっとインフォメーションに行けばあるッスね!」
やったー!と手を取りながら喜ぶ4人に、「何か困ったことがありましたら総合案内所まで」と微笑みかける従業員。日野はふと冷静になって、「確かにその通りだな」と一人呟いた。



