あのファンの子はまだ観に来ていない。 きっと、バレンタイン当日の千秋楽に来るんだ。 …気持ちまで負けてる気がしてきた。 直樹が誰を好きでも…私だって、直樹が好きなんだよ。 その気持ちは…誰にも負けたくない。 …渡そう。 渡す位…できるでしょ? 亮治や共演者にも渡せば…自然に直樹にも渡す事ができる。 それならできそうな気がしてきて、私はようやく落ち着いた。 バレンタイン当日、昼公演も夜公演も大盛況で千秋楽を迎えた。 「お疲れ~!はい、これ。…義理だからね?」 まず私は亮治に渡した。