――――――4月下旬。


満開の桜が散る通学路を、1人の女の子が歩く。



「あっ!」



その子は視界に入った人物に、声をかける。



「こーきー!!」




目の前を歩いていた、金髪の男が振り返る。


男は、身長約180㎝。
短髪で金髪で、ワックスを立てている。


髪の左側と眉には剃り込みが入っていて、ピアスは眉と口元と、耳に合計10個ほど。


目は細く、その鋭い目付きはなかなか人を寄せ付けない。

そしてご想像のとおり、服装は乱れ着。
学ランの前は全開、ダルダルセーターに、開いたカッターの中からは赤いTシャツにネックレス。



…とまあ、世間から見ればバリバリの怖そうなヤンキーなのだが…




「よっ」




彼女の顔を見た男は、外見からは考えられないほどの無邪気な笑顔を見せた。




「おはよ、奈々」




男が「奈々」と呼ぶ女の子は、身長150㎝ほどの、茶髪でストレートのロングヘアー。


化粧も濃くなく、見た目はギャルなどではない、普通の女の子だ。




「おはよっ!今日は遅刻してないんだねw」


「はあ?俺がいつ遅刻したよ?」


「…ほぼ毎日ですけど。」


「へーへー。そーでしたねっ」




彼らが出会ったのは、入学式。

そして今もう、ちゃっかり手を繋いで登校している。


彼らの出逢いは、それはもう有りがちなパターンだった。



まずは、『出逢い』の話から。