まだ肌寒さが残る3月
卒業式。
満開の桜が、風が吹くたびに
ヒラヒラと舞い散る。

ふと顔を上げると、2年間追いかけていた
あの人の背中。

「歩登先輩っ!」

優しい笑顔で振り返る先輩。

「短い間だったけど、
宇宙ちゃんと一緒にいれて
すごく楽しかったよ。」

「バイバイ。」

と軽く手をあげ、先輩は私に背を向けて歩き出した。
「まって、先輩!」

まだ...
伝えてないことがあるのに....!!
大声で呼びかけても、
先輩は振り返ることなく
歩き続ける。

「私...!!ずっと先輩の事が」


“ジリリリリリリ……”


ハッと目がさめ目覚まし時計をとめる。
……やっぱり夢、か。

ここ一週間
こんな夢ばかりみている。

桜木歩登先輩。


一度も話したことないし
遠くから見ている
だけだったけど
大好きな先輩。

夢の中でしかこんな風に
話すことが

できないなんて...。
と自分が情けなくなる。

先輩の卒業まで、

あと一ヶ月。

このままこの恋を終わらせたくない。

…絶対、あの夢の続き


先輩に伝えたい。


「今日こそは、先輩と
話せますように!」

毎日繰り返しても

叶わなかった
願い事をしながら、
宇宙は身支度を始めた。

まさか、今日その願いが叶うとは

知らずに....。