【完】─片思い─


「かず…」

「紗季、これっ! 土曜、行ったの。…2人への、お土産。じゃっ」

あたしは顔を見せないようにして、その場を離れた。

「和!!」

何度も紗季があたしの名前を呼んでくれていた。

けど…あたしは振り向かなかった。

振り向けなかった。

こんな顔…見られたくなかった。

こんな…涙で汚い顔。

家まで全力疾走だった。

こんなに走ったのは、久しぶりかもしれない。

「ぁ、姉貴、おかえり。フレンチトーストつくって…っておい!」

あたしは何も言わず、自分の部屋に駆け込んだ。

すぐにベッドに飛び込んだ。