「なぁ、稲実」 「ん?」 今は数学の時間。 私語をしてても、英語の時みたいに怒られない。 「俺、お前の好きな人知らないんだけど」 「教えてないし」 「…協力するぜ?」 「だから、できないの」 「…」 「東?」 「…それは、俺が頼りない、って事っすか?」 「?! ち、違うよ! あの…恥ずかしいし、結構いい感じなんだ!」 「…そっか!」 ぁ…。 東の笑顔は、あからさま作り笑顔だった。 なに、やってんだろあたし…。 好きな人に、作り笑顔させて…。