【完】─片思い─


*優輝side*

俺は、そっと紗季を自分の体から離した。

「紗季…ごめん」

「…いやっ! だって…和は、知らないんだよ?! あの時…助けたのはっ」

紗季は、もう一度、勢い良く俺の胸に飛び込んだ。

「そのことは、いいんだよ。俺が…勝手に帰ったんだし。わからないのも当たり前っ」

「…」

「もし…あいつが、一瀬を好きでも…もう一度、振り向かせればいいんだ」

「えっ…」

もう一度…「好き」って言ってもらえるように。

いや、言うんだ。

今度は、俺が伝えるんだ。

「あいつは…自分の気持ちを言った。俺はまだ言ってない。情けねぇよな」

「…優輝?」

「ぜってー振り向かせるから」

「…」

稲実を、振り向かせるぐらい…強くなりたい。

稲実が、頼れるくらい…大きくなりたい。