【完】─片思い─


「…稲実、彼氏?」

「ぇっと…うんっ。彼氏! そっちもデート中?」

「ぁ、うん…」

紗季は、気まずそうに言った。

「和、あのね…」

紗季が何か言おうとした瞬間、流はあたしの手を引っ張って歩き出した。

「りゅ、う…?!」

「俺たち、デート中なんで」

そう言って、流はあたしの手を引っ張って、屋台から離れた。

あたしは、ただ目を丸くしていた。

…ちょっと、嬉しいかも。

正直、今は紗季とは話しにくい。

あの場から、すぐに離れたかった。