「初めまして。犬岾真白っス」



楽しそうなブルーの瞳は、ふと私のと合った。

慌てて目をそらす。


私を見つけた真白は何かを言ってくるんじゃないかと心配した。

が、それは微妙な感じで裏切られた。



「このクラスは可愛い女子が多くて嬉しいっス」



少し頬を朱に染めて、はにかんだ真白。

今のでクラスの女子何人がやられただろう。


あの、演技に。



私は馬鹿馬鹿しくて、腕を枕に夢の世界へ飛び立とうとしていた。


せめて夢の中だけでも、安息できますように。



「おい弘雄!この状況でも寝る奴はお前ぐらいだ」



先生の呆れた声がする。

それは次第に遠ざかり、耳に届かなくなってきた。



「よし。お前が犬岾に校舎を案内してやれ」

「えェェェ?!!!」



靄のかかった意識は、今の言葉で完全に澄みきった。


机から顔を上げると、ちょっと怖い女子からの視線が刺さる。


何とかして今の命令から逃れなければ。

でないと私の命が危ない。



「私校舎に詳しくないです!」

「馬鹿かお前」



間髪入れずに答える先生。


完全敗北を納めた私に、真白が悪戯に笑いかける。



「ヨロシク」




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