発言に耳を疑っていると、さらにお母さんは畳み掛けた。



「今は猿と犬がいるわ。あと一人、雉(キジ)を探しなさい」

「は?」

「そしてこれから現れる鬼とその下部を、皆で力を合わせて退治しなさい!」

「…ねぇ、ちょっと待って」



一気に言われた言葉を、頭の中で整理した。


桃太郎。

犬、猿、そして雉。

鬼とその部下を退治。



「…何の冗談?」



それしか言えない。

ただ目の前に、動物と人間の姿を持つ生き物…弟がいるのは確か。


お母さんはため息をついて、飲み込みの悪い娘を、私を見た。



「これは本当。全て現実よ」



そう言われても…。

いきなり突き付けられた現実を、はいそうですかって受け入れれる筈がない。


ただお母さんの目は、いつになく真剣だった。



「貴方達も自己紹介なさい」



お母さんに促されて、青年は立ち上がって服のシワを伸ばした。


その衣服は見た事があって、ちょっと小さそうな様子から袁次のモノだと気付く。



「犬岾真白(イヌヤママシロ)っス。臣獣の名はマシロ」



そう言うなり、私の目の前に片膝をついて頭を垂れた。

その隣に、チョコンと小猿が座って言う。



『俺の名前はエンジ。人形の名は弘雄袁次(ヒロオエンジ)』


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