「何でもないっス」



お母さんに笑いかけた青年は、私を見て舌舐りをした。



何となくだけど、身の危険を感じる。



「そう?ならいいけど」



お母さんは私の勉強机の椅子を出して、そこに腰掛けた。


お母さんの肩には小猿が、青年に疑念のこもった目を向けている。

青年は微笑したまま小猿を見ている。



「桃華にはちゃんと説明しなきゃならないわね」



一人と一匹に気を取られていると、お母さんがゆっくりと説明を始めた。



「桃華は…十七代目の桃太郎よ」

「うん…うん?」



頷いて、そして首を傾げた。


だって、今、クソ真面目な表情で桃太郎とか言ったよね?!



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