奇妙な光景だった。 隣りに立っていたサラリーマン風の男性の顔の前で手をひらひらさせて見たが反応がない。
「何?」
私は小さく呟いた。と、どこからともなく誰かがすすり泣くような声が聞こえてきた。 「誰?」
動かなくなってしまった、風景の中に目を凝らす。
「お姉ちゃん…」
誰かが言って後ろから私の服を引っ張った。
振り返るとそこには赤いワンピースを着た、小学1、2年生ぐらいの女の子が私を見上げていた。
手には小さな時計を持っている。
黒くて大きな瞳と、胸あたりまである黒くてさらさらの髪が印象的だった。
「何?」
「時計が、時計がね。動かなくなっちゃった」
「と…けい?」
「これ」
そう言って女の子は手に持っていた時計を私に手渡してきた。
黄色くて丸い、何の変哲もない目覚まし時計のような時計だった。
見れば、時計の針は午後6時05分の時点で止まってしまっている。
「どうしよう…、ママに怒られちゃう。多分、電池切れだと思うんだけど」
「ママ?電池切れ?」
「この時計が動かないとこの世界の時間も動かなくなってしまうの」
時間が動かなくなる……
私は暫く頭の中が真っ白になってしまった。
あまりにも、突然に、あまりにも非日常的なことが起こり思考が一時停止してしまったのだ。
「何?」
私は小さく呟いた。と、どこからともなく誰かがすすり泣くような声が聞こえてきた。 「誰?」
動かなくなってしまった、風景の中に目を凝らす。
「お姉ちゃん…」
誰かが言って後ろから私の服を引っ張った。
振り返るとそこには赤いワンピースを着た、小学1、2年生ぐらいの女の子が私を見上げていた。
手には小さな時計を持っている。
黒くて大きな瞳と、胸あたりまである黒くてさらさらの髪が印象的だった。
「何?」
「時計が、時計がね。動かなくなっちゃった」
「と…けい?」
「これ」
そう言って女の子は手に持っていた時計を私に手渡してきた。
黄色くて丸い、何の変哲もない目覚まし時計のような時計だった。
見れば、時計の針は午後6時05分の時点で止まってしまっている。
「どうしよう…、ママに怒られちゃう。多分、電池切れだと思うんだけど」
「ママ?電池切れ?」
「この時計が動かないとこの世界の時間も動かなくなってしまうの」
時間が動かなくなる……
私は暫く頭の中が真っ白になってしまった。
あまりにも、突然に、あまりにも非日常的なことが起こり思考が一時停止してしまったのだ。