声、だ。 あたしはそれに、一瞬意識を奪われて振り返った。 ふわって香るいい香りみたく、空気に乗って、流れてきた声。 その声の主が誰なのか、無意識が知りたがった。 いつものことなんだけど、目の前の高校の校舎に向かって、必死で走っている。 もう、遅刻ギリギリ過ぎて、一秒の猶予もない瞬間。 なのに、あたしの足は速度を緩め、目がさ迷う。