「綾菜ちゃん、怯えないで。僕らは苛めにきたわけじゃないから」
「久我さんのところに、遊びにきたの? なら部屋に入って」
「入れるな。帰れ」
久我に邪険にされて追いだされても、懲りずに二人は遊びにくる。
部活も一緒だし、一応は仲良しということなのだろう。
「違う、違う。僕らは綾菜ちゃんに話があるの」
「私?」
思いあたる節がなくて小首を傾げる。
久我は、即座に綾菜の首をまっすぐに戻した。
「自覚なく、そういう仕草をするのはやめろ」
「隼人、警戒しなくても大丈夫。綾菜ちゃんが可愛いのは僕らも十分わかっているから」
周りの空気が冷えていく。
その理由が全くわからない綾菜はただ戸惑うばかり。
「用件があるなら聞いてやる。さっさと言って帰れ」
「俺たちは綾菜に用があるんだ」
「そうそう。隼人は部屋に戻れば?」
凍った空気に冷たい火花。
男子の仲良しは、みんなこんな雰囲気なのかな。
乙女にはとても耐えられそうはない。
