「だいたい、風呂なら部屋のを使えばいいだろう?」
アザミ寮は大浴場のほかに、各個室にもユニットバスが備えつけられている。
久我はいつも部屋のものを使っていた。
せっかく大きいお風呂があるのに使わないなんて、すごくもったいない。
「みんなと一緒に入るお風呂のほうが楽しいんです」
湯船の縁にもたれかかっての楽しいおしゃべり。
つい、のぼせる限界まで浸かってしまう。
「一人で入るのが、寂しいのなら、俺と一緒に入るか?」
「あんな狭い湯船に一緒に入ったら苦しいです。体育座りをしてギリギリ二人が入れるくらいの大きさでしょう?」
人間二人がぎゅうぎゅう詰めでお風呂に入る姿を想像し、綾菜はぶんぶん首を振った。
「オマエは、期待通り、検討違いの反応をしてくれるよな……」
「検討違い?」
「ホント、意識しなすぎ」
