「私、そろそろ行くね。探してくれてありがとう」
綾菜は、笑いの止まらない真坂に構うのをやめて、立ちあがった。
部屋に戻るのが遅いと、久我が心配する。
「綾菜」
扉の手前で綾菜は振りかえった。
今、名前を呼んだのは多分、御影。
「俺も、探してやる」
「なにを?」
「お前の母親のリング。俺も探す。いいな」
断るには、御影の迫力がありすぎた。
つい反射でこくんと頷いてしまう。
「あの、ありがとう。……琥珀」
向こうも名前で呼んだのだから、構わないよね。
「ちょっと、綾菜ちゃん。どうして、琥珀だけ名前なの。贔屓?」
「あっ、そっか。じゃあ、純也くん?」
「純也くん……なんか、萌えるかも。もう一回呼んでみて」
両腕で自身を抱きしめて、真坂は悶える。
やっぱり変人。
「知らない。私、帰る」
綾菜は、ぱたんと扉を閉めた。
名前で呼びあう関係。
もしかして、はじめて男友達ができたのかもと、少し照れくさかった。
