「お前の母親のリングは、なかった」
目を逸らして、御影は言う。
すまなそうな顔をする必要などないのに。
意地悪な態度に、すっかり慣れているだけに、どうしていいのかわからなくなる。
「えっと、探してもらって、ありがとう。けど、自分で見つけるから平気。久我さんが手伝ってくれるし」
「久我が?」
御影は、考えこんでいる。
なにか、おかしなことを言っただろうか。
「うん。探してくれるって言ってくれたの」
「個室を捜索させろと、一緒に頼みに来たときも思ったけど、珍しいね。隼人が他人を構うなんて」
真坂の言葉に、綾菜は目をぱちくりさせた。
他人を構うのが珍しいとは、誰のことを言っているのだろう。
「久我さんは、普通にというか、かなり面倒見のいいひとだと思うけど?」
「えっ?」
目の前の二人が絶句する。
「綾菜ちゃん、確認するけど、隼人の話をしているんだよね」
「ルームメートの久我隼人さん。ほかに久我さんなんて知らないし」
完璧なシンクロ動作で二人が顔を見合わせる。
綾菜は、困惑した。
