「こーら、琥珀。あんまり苛めると嫌われちゃうよ」
助け舟、とは思えなかった。
顔を出したのは、変態もとい変人副寮長の真坂純也。
美女と表現したほうがいいくらいの美貌は、変人でなければもっと輝くのに、とても残念。
このひとが来ると、助けどころか、引っかきまわされて収集がつかなくなる。
「苛めているわけじゃない。教育だ。なあ、半崎?」
意地悪そうな笑みを浮かべて、教育などとよく言えたものだ。
声高に主張したいが、反論すると百倍返しされるのが目に見えている。
柔道部のランニングコースに呼びだされたり、ラグビー部の筋トレを見学させられたり。
文句を言うたびに、スパルタを通りこして嫌がらせに近いことをされてきた。
「死にそうな教育をしてくれて、ホント感謝しています」
やけくそで答えると、聞いていた真坂は吹きだした。
