「ホ、ホントにここまで。限界だよ」
冷や汗をたらしながら、綾菜は声を絞りだした。これ以上は、確実に気絶する。
「ちっ、一メートルか」
御影は舌打ちした。
昨日と距離に変化なし。
「怒らないでよ。一朝一夕にはいかないでしょう?」
少しずつよくなっているとはいえ、久我を除けば、男性にまだ触れることはできていない。
自称『親切な寮長』御影は、慣れるためだと、毎日のように失神寸前の距離まで綾菜に接近している。
感謝すべきかもしれないけれど、どうしても、意地悪をされているだけではとの疑いが消えない。
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