「ずいぶんと楽しそうだな。記念写真でも撮ってやろうか?」
「うわっ、御影くん」
振りかえると、御影琥珀が扉にもたれて立っていた。
眼鏡ごしの視線は、相変わらず鋭い。
見えない光線が目から発射された気がして、思わず、横跳びしてそれを避けた。
「相変わらず、いい態度だな」
御影には、ある意味、ずいぶん慣れた。
もしかしたら、ルームメートの久我よりも慣れたといえるかもしれない。
「こういう態度をさせているのは、御影くんだもの」
久我のことは、優しかったり乱暴だったりで、いまだに把握しきれていない。
けれど、心ならずも御影への理解は完璧。
――意地悪、スパルタ。
彼を表す表現はこの二つだけで十分だ。
「ち、近づかないで」
無駄だとわかっていて叫ぶ。
「甘いな」
綾菜が涙目になっているのを、わかっていて、スパルタ男は距離を詰めてきた。
