「想像でしか、ないけど」
久我が口を開いた。
「女子寮に、スクールリングをここに置いていく伝統でもあったんじゃないか? 男女混合になって、途絶えたのかもしれない」
「そういえば……」
母の言葉が思いだされる。
「叶わなかった想いと一緒に置いてきた、と言っていたような気がします」
届かなかった想いを、寮に残して旅立っていく。そんな習慣があったのかもしれない。
「ほかの暖炉もきっと同じ構造になっていて、みんなこの場所に置いていったんじゃないかな」
「じゃあ」
「しらみつぶしにあたっていけば、見つかる可能性はある」
母の想いを見つけてあげることができるかもしれない。
綾菜は見知らぬ誰かの想いが詰まったリングをそっと握った。
