「断るのか。意外と学習能力があるな」
「当たり前です」
綾菜は言いきった。
限界ギリギリの強烈な体験をして、学ばないほうがおかしい。
「仕方ないな。今は我慢してやる。……ほら、これ」
金属がぶつかる高い音とともに、手の中になにかが落とされた。
「見つかったんですか?」
「違う。よく見ろ」
手の中に落とされたのは女性のものと思われるスクールリングが四つ。腐食が進んだらしく、ずいぶんと黒ずんでいる。
「お母さんのじゃ、ない?」
サイドに刻んである入学年を確認する。全て母よりもずっと前のものだ。
「煙突につながるところに、小さい空間があったんだ。そこに入っていた」
「こんなに?」
母も暖炉にリングを置いてきたと言っていた。その暖炉から別のリングが見つかる。
これは偶然なのだろうか。
