「リングは暖炉にあると言っていたな。ほかに情報は?」
「ないです」
久我の眉間に皺が寄ったのを察し、綾菜は身体を縮めた。
「普通、聞いておくだろう? この寮に昔は暖炉だった場所がいくつあると思っているんだ?」
「五つや六つの子どもが、そこまで気が回りませんよ」
母がもっと長く生きていたなら、もう少し詳しく聞いたかもしれないが、今さら悔やんでも仕方がないこと。
「リングは自分で探すので、久我さんは気にしないでください」
手伝おうとしてくれた気持ちだけで十分だ。
同室者というだけで、途方もない宝探しにつきあわせる気はない。
「ひっ」
切れ長の瞳がギロリと綾菜を睨む。
「探すと言っただろう? 何度も言わせるな」
諦める気はなかったらしい。
「よろしく、お願いします……」
綾菜はこう返事をするしかなかった。
