「俺が、リングを見つけてやるよ」
本気で言っているのだろうか。
大抵のひとがくだらないと笑う話に、つきあってくれるというの?
「久我さんって……」
「ん?」
「もしかして、すっごいロマンチスト?」
瞬間、思いきり頬をつねられた。
「い、痛いです」
「東久保なら、すかさずラリアートなところだろ? こんなもんですませてやっているんだ。優しいと思わないか?」
十分、痛い。
魔王の基準で優しいといわれても困る。
こころの中でたくさん抗議をしたけれど、降臨した魔王は怖いので、口にするのはやめた。
触らぬ魔王にタタリなし。
「とても優しいです。ハイ」
「こころがこもっていない」
ぐりぐりと、つねった頬をさらに動かされる。かなり、痛い。
「痛いですって」
優しいのか、意地悪なのか、現実主義か夢想好きなのか。
この同室者を理解できるのは、まだまだ先になりそうだ。
