「オマエのせいじゃない」
久我がそっと頭を撫でてくれる。
積もった澱は消えないけれど、少しだけこころが軽くなる。
「認知したいと言われても、頷けないんです。なにより、お父さんとまだ呼べなくて」
「オマエのせいじゃないんだ」
抱きよせられて、綾菜は慌てた。
考えると、切なくはなるが、大きな慰めを求めるほどではない。
「く、久我さん。私は、大丈夫なので、もっと世間話的に聞いてください」
抱きしめられたままならどうしよう、と不安になったが、今回は簡単に解放してくれた。
少し物足りなく感じたのは、きっと気のせい。
「それで、母が父に渡したかったというスクールリングを、代わりに私が渡してあげようかな、と」
自己満足だと笑われるかもしれない。
綾菜自身、なんの意味もないとわかっている。
けれど、母のためにしてあげられることは、自分が前に進むためにできることは、これしか思いつかなかった。
「ばかばかしいですよね」
言われる前に自嘲してみせる。
返ってきたのは思いもかけない言葉。
「探してやる」
「えっ?」
