「私の存在を知った父が会いに来てくれたのは去年でした。もちろん、うれしかったんですけど、なんだかすごく申し訳なくて」 「申し訳ない? 父親に対して?」 小さく首を振る。 生きているひとに覚える罪悪感ならよかった。そのひとに対して努力できると思えるから。 「母に、です。一番、父に会いたがっていたのは母でした。なのに、会えたのは私だけ」 父を憎んだことも、嫌ったこともない。 けれど、もう少し早く来てくれればと思ったのは事実。