「だから、探しているものを言え」
魔王は意外と短気。
こころのメモにしっかりと記入してから、返事をする。
「母のスクールリングを見つけたいんです」
「……オマエの親の? 首から下げているじゃないか」
久我は綾菜のネックレスを引っぱった。
プラチナチェーンには、鈴のペンダントヘッドとともに、男物のスクールリングが通されている。
「これは母が父からもらったものです。私が探したいのは、母自身のリングなんです」
ずっと、母が気にかけていたリング。
娘として願いを叶えてあげたい。
「母親の、スクールリング?」
「はい。私の母は、寮の暖炉に自分のリングを置いてきちゃったと言っていたんです」
おとぎ話を語るように、アザミ寮にはお母さんのリングがあるのよと何度も聞かせてくれた。
好きあう同士が交換するのだという、学園のスクールリング。
お父さんに渡せなかったのと、たった一度だけ呟いた母の横顔を今でも覚えている。
笑っているのに、すごく寂しそうで、胸が締めつけられた。
