「ところで、こんなとこに身体を突っこんで、なにをしていたんだ?」
「ちょっと、探しものです」
少し、口ごもった。見つかる確率は僅かだとわかっているだけに、余計に言いにくい。
「なにか失くしたのか? 一緒に探してやる」
「面倒見のいい魔王……」
「なんか言ったか?」
切れ長の瞳が鋭くなる。
「な、なんでもないです」
ちょっと怖いけれど、親切なことに変わりはないようだ。
新しいイメージを、どう受けいれるべきか悩む。
「この中なのか?」
久我はすでに、かつて暖炉だった場所に入ろうとしている。
綾菜は慌てて引きとめた。
「失くしたわけじゃないんです。ここにあるかどうかもわからないし」
