「このままだとドキドキしすぎて、心臓が壊れます。だから、離して」
「いいよ、壊れて」
「えっ?」
「俺のせいで壊れるんだろ? いいな。想像するだけでゾクゾクする」
綾菜は今度こそ、確信した。
魔王だ。
「や……。なに?」
髪に唇が押しつけられた。頭頂部だけでなく、側頭部から、こめかみまで何度も何度も。
身体がふわふわして、頭はくらくらする。
お酒を飲んだことはないけれど、酔うってこんな感じかもしれない。
「……倒れないんだな? まだ、俺に男を感じない?」
「そこ、耳……っ、な、舐めちゃやだ……。噛んでるっ」
触れられたところに生じた熱が、すぐさま身体全体に広がる。
こんなの、経験したことがない。
男のひとかどうかなど、考える余裕は全くなかった。
「久我さん……」
「ん、どうした?」
耳元で響く声が、すごく甘い。
男のひとの声が、こんなに蕩けそうなはずがない。
やっぱり、魔王。
