「俺が、男だとわかりたい?」
本能が危険を知らせている。
綾菜はぶんぶんと首を振った。
頬をひっぱられている痛みと、豹変された衝撃とで涙目になってしまう。
「怖い……」
しぼりだすように呟いた瞬間、頬から急に手が離された。
切れ長の瞳がじっと見つめてくる。
「オマエ、反則」
背中に腕が回されて、胸に顔を埋めさせられた。
抱きしめられていると悟った瞬間、鼓動が急激に早くなる。
「男に免疫のない女なんて、こっちだって相手にしたことないんだよ」
強い力ではないのに、すっぽり包まれてしまって、腕の中から逃れることができない。
なんだか、自分がとても小さくなった気がする。
「は、離してください」
抵抗しようと身をよじると、さらに抱きよせられた。
痛みと錯覚するほどに胸の拍動が大きい。
「なんで?」
「なんでって……」
「納得する理由があるなら、離してやる」
こんな意地悪なひとだった?
魔王の印象はやはり間違っていないのかもしれない。
