「私が久我さんを男のひととして意識することはないので安心してください」
とどめの一撃。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
地の底からマグマが湧きあがる音が聞こえた気がした。
「オマエはっ。ひとが紳士でいてやっていれば、次から次へと」
「い、痛い、痛いです~」
両頬を思い切りひっぱられて綾菜は、叫んだ。
同時に驚きで目が丸くになる。
綾菜の頬をひっぱっているのは、どう見ても久我。
言葉が乱暴なときこそあれ、びっくりするほど優しく接してくれたひと。
こんな暴力的な態度をとったことなど、今まで一度もない。
「俺、女から対象外扱いされたこと今までないんだよな」
視線は険しいのに、口元には笑みが浮かんでいる。
なんて表現したらいいんだろう。
そう。妖艶な笑み、だ。
「……王子じゃ、ない……」
綾菜は自分の認識が誤っていたことを悟った。
王子はこんな笑い方はしない。
――魔王。
唐突に、その言葉が頭に浮かんだ。
