「便利に使っているつもりはないですけど、今までずいぶんお世話になりました」
「もう倒れないと言いたげだな。本当に大丈夫なのか?」
綾菜は自分の考えが正しいのか少し考える。
経験で学んだ法則。きっと間違っていない。
「男のひとだと思わなければ、血の気が引いたりしないみたいです。だから、久我さんは平気みたい」
造作の整った顔立ちに、清潔感のある仕草。少し色気がありすぎるかなとは思うが許容範囲だ。
おとぎ話の王子だと自分に言いきかせれば、テンションがあがりこそすれ、気分が悪くなることは全くなくなった。
「俺は、男じゃないのか?」
「久我さんが、男性なのは知っていますよ。ただ、私にとってはそうじゃないだけです」
久我の表情が少し硬くなったことに気づかず、綾菜は続ける。
「ただのルームメートとして、久我さんとはきっとうまくやれると思います」
「ただの、ルームメート……」
久我の眉間に指をあてた。おちつこうとしているらしい。
綾菜に空気を読むという才はまるでなかった。理佳が見ていたら、墓穴を掘るなと叫んだことだろう。
