耳元で久我の声が低く響いた。 「声、低い……」 なにか、忘れている。 この低い声は……男のひとの声。 目の前にいるのは絵本の王子? 違う。 ――男の、ひとだ。 「半崎?」 さーっと引いていく血の気。 「……やっぱり、私、ダメみたい……」 「半崎っ」 暗くなっていく意識。 かくして、今日も綾菜は久我にベッドまで運ばれることとなる。