「とにかく、男が苦手なんだろ? リングは身につけて、彼氏がいるってことにしておけ。多少は被害が違う」

「意味がわかりませーん」

 つーんと顔を背けて、綾菜は答えた。

 しばらく許してやりたくない。

「わからなくてもいいから、そうしとけ」

「……」

 乙女のこころを傷つけたひとに返事などしてやらない。

 綾菜は無言で、顔をベッドにつけた。

「半崎?」

「……」

「まさか、泣いているのか?」

 うろたえた声がする。

 さすがに無視はやりすぎだった。

 ――謝ろう。

 綾菜は意を決して顔をあげた。

「大丈夫か?」

「――っ!」

 端正な顔が目の前十センチにある。

 不用意に近づかないはずじゃなかったのか。

 この衝撃はリカバリ不可能。

「半崎っ??」

 綾菜はこの日三度目のブラックアウトを経験した。