「オマエが男物のリングを身につけていれば、彼氏持ちだと思われるだろ?」
「だって、これは形見ですよ?」
「見た目じゃわからない」
「そうなんだ……」
世間はそんなふうに思うのか。
前の寮では、私の事情などそれこそ寮生全員が知っていたから、気にもとめなかった。
「でも、私が彼氏持ちなら、男よけができるという意味がわかりません」
「は?」
「もしかして、寮の規則に恋人がいる女性との会話禁止とか、半径五メートル以内に接近禁止があるんですか?」
あるならラッキーだ。
もう気を失わなくてすむ。
「オマエ……。自分の顔、鏡で見たことがあるか?」
「毎日、見ていますよ。当然でしょう?」
乙女の端くれとして鏡は必需品。
失礼なことを聞かないでほしい。
「ヤバいとか、思ったことないの?」
