王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~


「とりあえず、これをつけとけ」

 呆然とする綾菜に、久我は銀色に光るなにかをぽーんと投げてよこした

 慌てて両手を広げ、それを受けとる。

「妖精の……鈴?」

 小指の大きさ程度のペンダントヘッドだった。可愛らしい妖精の下にシルバーの鐘がついている。

 揺らすと、チリンと微かな音がした。

「音で居場所がわかれば、不用意に近づくリスクが減るだろ? 猫につける鈴みたいなものだ」

「猫の鈴……」

 複雑な気分になりながらも、綾菜はいつもつけているネックレスを外した。

 プラチナの鎖に、渡されたペンダントヘッドを通す。

 鈴は鎖を伝って、中央のリングにコツンとあたった。

 滴の形が刻印された重量感のあるリング。

 指には大きすぎるから、綾菜はネックレスに通していつも身につけている。

「それ、うちのスクールリングだろ? オマエのじゃないよな」

「母の形見です。父にもらったそうで、母はずっと大事にしていました」

 母と同じ学園に通っていた父が、卒業間近に贈ったらしい。

 父のものとして渡せる唯一だから、と最期の瞬間、綾菜に譲ってくれた。