「半崎、ちょっと待て」
待てない。今、話さなければ、もうちゃんと話せない気がする。
綾菜はむくりと身体を起こした。
「聞いてください。私、もごもごごごご」
久我の大きな手で口を塞がれ、言葉が続けられない。
話しあいたいのに、どうして邪魔をするのだろう。
「落ちつけ。……オマエ、多分いろいろと誤解しているぞ」
「……誤解?」
ようやく手を離してもらって、話すことができるようになった。
だが誤解と言われ、なにを話してよいのかわからなくなる。
「俺は、オマエが掛け算をできなくても気にしない」
「掛け算はさすがにできますけど……」
そこはさすがに否定した。
暗算しろと言われたら難しいが、とりあえず掛け算ぐらいはできる。
「たとえだ。本気にするな。成績なんかで俺が態度を変えるとでも思っているのか?」
「実際、変わったじゃないですか」
