「ここの本って、マニアックだよね」
休憩中まで机の近くにいたくはない。
綾菜は本棚に興味がひかれたそぶりで立ちあがった。
棚に並んでいるのは、機械工学らしき本。いかにも専門書という風情で、寮の図書室に収まるには似つかわしくない気がする。
「卒業生の蔵書が多いからな。希少な専門書もあるぞ。俺たちも中学のときからよく借りに来た」
「そうなんだ」
綾菜は手近にあった本を手に取り、ぱらぱらとめくってみた。いろいろな機械の構造が図解入りで説明されている。
「ああ、その本か。すごく面白いぞ。お前も読んでみろ。ロボットの基礎がよくわかる」
「ふーん。ロボットかあ」
綾菜が好む本はパッチワークやハワイアンキルトの本。決してロボットの構造についての本ではない。
なのに、御影に勧められると読んでみようかなという気になるから不思議だ。
友達の好きなものだと思うと、今まで関心がなかったことでも興味がわくのかもしれない。
