「五分、五分だけ休憩」
これ以上は脳が煮える。
綾菜は御影にひたすら懇願した。
「さっき休憩したばかりだろう」
トイレに行かせてもらったのが休憩とは言わない。
この先生は厳しすぎる。
「ちょっとだけでいいから。このままじゃ、覚えた公式が発酵しそう」
試験まであと一週間。
綾菜は授業が終わると、この図書館で御影に勉強を教えてもらっている。
相変わらず、ここを利用する生徒はほとんどいない。実質、貸切状態。
ただ、貸切というのは、いいことばかりではない。
大きな声で質問しても誰にも迷惑がかからない代わりに、周囲を気にすることなく怒られてしまう。
「……三分だけだからな。お前は集中力がなさすぎだぞ」
「やった」
綾菜は勝ちとった休息に満面の笑みを浮かべた。
公式を覚えたら、ひたすら問題を解かされる。頭より先に身体に覚えこませるスパルタ教育。
こまめに心身を休ませてあげなければパンクしてしまう。
