「理佳ちゃんだって大丈夫なの? バスケ部は寸前まで活動があるんでしょ。準備する暇がないじゃない」

 理佳こそのんびりラーメンをすすっている場合ではないはず。

 もう時間がないのに、焦らないでいられるなんて不思議だ。

「アンタね。私は東久保理佳様だよ。天地がひっくり返ってもそんなへまをするわけがない」

「痛っ。理佳ちゃん、ひどーい……。なんで?」

 久しぶりの手刀が頭に直撃した。

 叩かれるほどおかしなことを言ったつもりはないのに。

「悪いけど、私は学年五番以下には下がったことないから」

 綾菜は思わず、カレーのスプーンを落とした。

 近くにいるはずの理佳が、急に遠くに見える。

「理佳ちゃん、普通科だったよね。……普通科の五番以内? 絶対、人間じゃない」

 言いきると、もう一度手刀がヒット。

 とても、痛い。

「バカなこと言っていないで、アンタは勉強しなさい」

 ホントその通り。

 綾菜はしゅんとして頷いた。