「お前、なにを言っている?」
「私がいるから遠慮して観られないんですよね。観られないものを渡されて不機嫌になったと。大丈夫です。ちゃんとわかっています」
暖炉から次々とお宝が発見されたとき、久我は決して綾菜に見せようとはしなかった。
今なら、衝撃を与えないよう配慮してくれたのだとわかる。
そんな久我のことだ。
どんなに観たくとも、綾菜がいれば我慢するだろう。
今度は綾菜が気づかう番だ。
「ありがとう、半崎」
久我は素直に綾菜からDVDを受けとった。口元に笑みまで浮かんでいる。
「久我さん……」
今から、濡れた女豹を観るのか。
久我が裸の女性が映った映像を観ることを考えたら、なぜか胸が苦しくなる。
「じゃあ、私は理佳ちゃんの部屋に行きます」
綾菜は立ちあがった。
自分で言ったことなのに、追いだされたような気持ち。矛盾している。
「……って、俺が喜ぶとでも思ったのか。このバカ! そこに座れ。説教だ」
「へっ?」
あまりの迫力に綾菜はぺたりと座りこんだ。
そこから三十分。
息継ぎをしているのか心配になるほど絶え間ない小言。
綾菜は我慢の子でひたすら聞きつづけた。
