「お説教は十分に堪能したので結構です」
綾菜は焦った。
このままでは、また小言を聞かされる。
なんとかしなくては。
「そ、そうだ、久我さん。私、預かっているものがあるんです。忘れていました」
部屋に戻る際に真坂から預かったもの。これを渡せばきっと機嫌が直るに違いない。
「俺に?」
訝しげな表情をみせる久我。
綾菜はハート形のパッチワークを施したトートバックから紙袋を取りだした。
詳しい中身は知らない。
絶対に喜ぶはずだと、真坂は太鼓判を押していた。
手渡す時に袋から出したほうが、より効果的だと言っていたっけ。
「これです。どうぞ」
綾菜は袋に手を入れて、中のものを取りだした。プラスチックのような固い手触り。DVDの箱だ。
「……」
無言の久我。
綾菜は手に持ったものを凝視したまま固まった。
「……濡れた、女豹……」
