「冗談は置いておくとして、じいさんの収集物は別荘にある。日帰りじゃ難しいな」
「じゃあ、今度の試験休みにとってこい」
ぴしゃりと言いきる御影。
いつもの調子を取り戻し、真坂は腰をくねらせた。
「ホントに僕ひとりで行かせる気? みんな、冷たすぎない?」
真坂と目が合ったとたん、首を横に振る御影。
相手にしないとばかりに右手で払いのける動作をする久我。
残っているのはたったひとり。
「綾菜ちゃん、まさか君まで僕を見捨てるの?」
変態でも見かけは迫力のある美形。
長いまつ毛を瞬かせながら見つめられると、どぎまぎして冷たい態度がとれなくなる。
「見捨てるなんて、私、そんなこと……」
「だよねえ。綾菜ちゃんは僕をひとりぼっちになんかできないよね」
華やかで艶やかな笑顔。
ひとは綺麗なものに目を奪われると正常な判断ができなくなる。
「半崎、頷くんじゃないぞ」
久我の警告は遅すぎた。
次の瞬間、熱に浮かされたように綾菜は首を縦に振っていた。
