「――つまり、山師のおじいさんが地図を保管していたのね」
「保管っていい言葉だよね。誰かさんたちみたく、盗んだとか隠したとか言わない綾菜ちゃんが大好きだよ」
山師とは投機的な事業で一攫千金を狙うひとのこと。
要するにトレジャーハンター。
学園の理事上だった真坂の祖父は、埋蔵金を掘りあてることをライフワークとしていたらしい。
「おじいさんは噂を本気にしたってこと?」
終戦直前に、軍が大量の金塊を寮の地下に隠したという噂。
「どうかな? 小さな噂にさえ飛びつくひとだったから。けど、状況からみれば犯人はじいさんだろうね」
眉唾な話を真剣に調べるため、退任の際、真坂の祖父は資料を持ちさった。
返却されないまま他界してしまったのが、紛失の真相だろうという三人の予想。
「純也。お前、家に帰って地図をとってこい。資料館から盗んだ書類も。寮長命令だ」
寮長としての責任を思いだしたらしい。
御影はぴしっと真坂を指さした。
「僕、ひとりでおうちに帰れない……」
ロボットのアームを指でさすって真坂はいじける。
「お前は、子どもか」
御影の蹴りがみぞおちにヒット。真坂は至福の表情で悶絶した。
