「お前に頼みたいのはひとつだけだ」
「もったいぶらずに早く言え。ったく、お前といい、純也といい……」
すぐムキになる傾向がある御影。
焦らされたりからかわれたりして、真坂によく遊ばれているけれど、久我からも同じようにされているのだろうか。
少し不憫。
「簡単だ。そこの副寮長を説得しろ」
「純也くんを?」
「純也を?」
綾菜と御影は二人揃って首を傾げた。
「……僕?」
首を傾げたひとがもうひとり。
真坂も理解できないという顔をしている。
「学園の資料館に行ったが、寮に関する古い資料は全て紛失していた。……気になるのは、どれもが同じ時期になくなったということ」
久我が資料館へ行ったことは初耳。
いつの間に、そんなことまでしてくれていたのだろう。
ルームメートだから?
うれしい気持ちと、申し訳ない気持ちがごちゃまぜになって綾菜の胸を締めつける。
「隼人、もしかして時期っていうのは前学長の退任の頃?」
真坂にしては珍しく、うんざりした表情で尋ねてきた。
