「この前、寮生を立ち入らせた場所は安全が確認できているところだけだ。地下室がヤバいことはお前も知っているだろう?」
御影も険しい顔をしている。
確かに地下室は戦時中の秘密基地があったとか、迷子になったまま何年も行方不明のひとがいるだとか怪しい噂があるらしい。
母のためとはいえ、そんな危ないところの捜索は綾菜も悩んでしまう。
「久我さん、私も危険な真似はちょっと……」
綾菜自身だけならともかく、頑固な久我は手伝う意思を翻さない。
大切なルームメートが危ない目に遭ったらと思うと怖くなる。
「寮長として言うが、地下室への立ち入り申請をしても俺で止めるぞ」
立ち入り禁止区域へ入るには寮長と学園の許可がいる。
寮長である御影がダメと言うなら、地下室の捜索は不可能。
綾菜はほっとした。
これで久我に無理をさせずにすむ。
